陰性である証明を求める患者

前回に引き続き、PCR検査をテーマに記事を執筆させていただきます。前回はPCR検査とはそもそもどのようなものであるかについて述べました。

PCR検査の正体

今回はPCR検査と患者の関係について述べたいと思います。

【陰性である証明を求める患者】

「咳と鼻水が出ていて、熱があるのですが、コロナではないでしょうか?」

「何も症状は無いのですが、コロナじゃないかと心配で来ました。」

医療機関では、このような方々と頻繁に遭遇します。COVID-19を制御するためには

 

①Social Distancing

②検査(PCR検査)

③隔離(感染症病棟・ホテル・自宅等)

 

の3つが重要とされています。PCR検査自体は、COVID-19対応の中核を成す重要なものです。新型コロナ受診相談窓口 (帰国者・接触者電話相談センターの電話は鳴り止まず「なかなか繋がらなくて…ようやく病院に来れました」と話していた患者すらいました。

そんな中、楽天がジェネシスヘルスケアと提携して「新型コロナPCR検査キット」を販売するというニュースが流れました。このキットは「新型コロナウイルスに感染しているか心配である人」が対象であり、「従業員を出勤させるべきか、自宅待機とすべきかを判断する」ことに活用する事が想定されていました。つまり、陰性である事を確認するためのPCR検査としての位置付けで販売されたものでした。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200430/k10012411701000.html

医療機関を訪れる人の中には「これで陰性なら、安心です。」と口にする人が一体どれほどいるのでしょうか。COVID-19の不安に駆られ、必死になって電話をかけ続け、不安そうな顔をしながら病院にやってきた人は大勢居ます。

そして、この傾向は患者だけにとどまりません。一般的にはあまり認知されていませんが、日本国内における死因の第5位は肺炎であり、その数は脳血管疾患や老衰とほとんど変わらないくらい多くなっています。つまり高齢社会において肺炎という病気はごくありふれた病気であり、施設や家庭から搬送されてくる肺炎患者はかなりの数存在しています。

しかし問題は、その中でCOVID-19であるケースはごく僅かであり、ほとんどが誤嚥性肺炎等の高齢者にありふれた疾患であるという事です。入院するベッドが空いていない等の理由で転送先を探そうとしても「発熱がある、レントゲン上では肺炎像がある」というだけで、ほとんどの医療機関から「転送拒否」というお返事が来てしまいます。それが明らかに誤嚥性肺炎であったとしても、です。しかし、そのような患者に対してPCR検査を実施し、その結果が「陰性」であると分かると、まるで手のひらを返したかのように転送を引き受けてくれるケースが存在しています。そのため「PCR検査が陰性でした」というお墨付きを付けるためだけにPCR検査を実施している状況があります。

「PCR検査で陰性」という事を求める人々と医療機関の姿があります。しかし、そこには落とし穴がある事に注目する必要があります。この落とし穴について、次回に続きます。

【記事一覧】COVID-19あれこれ

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